私は、学部生時代、英語会話研究会(ESS)に所属し、その中でドラマセクション(演劇)にいた。ESSは、通常、Discussion、Debate、SpeechやGuideなどのセクションに分かれ活動している。その中で、私は、ドラマセクションに所属し、劇作りに励んでいたというわけである。わずか、2年間であったが、非常に貴重な体験ができた。
33th F.U.E.T |
プロップ(小道具)担当。 この時、初めて舞台の厳しさを見た。華やかな舞台とは裏腹に、全く地味な作業の繰り返しでこんなにものを作ることが大変だとは思わなかった。本番中でも、当然ではあるが、少し音を立てただけでずいぶんと怒られもした。 小道具といっても、食器や灰皿などを集めてくるだけでなく、家具類(机やタンスなど)まで自作していた。サークル員にその作業している姿を見て「職人」と呼ばれるほど1つ1つの小道具を作っていくことに熱中していたものだ。もっとも、できあがったものは大したものでなく、技術的にも大したものじゃないし(ヨゴシを入れたりとかそういった舞台特有な技術)、センスもなかったけどね。 |
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"Driving Miss Daisy" Director Kouji Takeuchi 1992.10 浦安市民文化会館 |
'93 春公演 |
キャスト担当。 公演2回目ながら、最高学年であったので、少し不安を感じながらのスタート。キャストは初めてのことであり、緊張感と不安でがちがちであった。役どころは、牧師であり、偉そうに笑うのがなかなか難しい。特徴ある役だけど、実際演じるのがなかなか大変だった。その牧師は、結婚しており、婦人との関係、友人関係をはっきりと表現するのもなかなか難しいものだ。どうしても、普段の友人関係が舞台に影響してしまうし、恥ずかしさもある。とても、夫婦には見えなかったはずだ。 しかしながら、この公演の前に、ドラマのセミナーに出て、他大のドラマをやっている人と知り合いになったりして、キャストの面白味が何となく分かってきたのもこの頃である。 |
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"The Flattering Word" by Jeorge Kelly Director Keiko Kanno 1993.5 松前記念会館 |
34th F.U.E.T |
キャスト担当(悪役)。 3年生はこれまで賞を取ってなかったことと、最後の舞台ということもあり、かなり気合いを入れて練習していた。そこで、やれるだけのことはやった。ただ、その気合いが気負いになっていたかもしれない。メンバーが少なく、いくつかの役職を兼任しなければいけなかったこと、人数の割に舞台空間が大きすぎたこと。そこで、どこか動きが固く、独りよがりな舞台になっていたかもしれない。 とはいうものの、とにかく一からみんなで作り上げた舞台。完成させることができたことが何よりもうれしかった。 |
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"The Damask Drum" (綾の鼓) by Yukio Misima Director Keiko Kanno 1993.11 浦安市民文化会館 |
B.B.P '94 |
ライト担当(照明)。 F.U.E.Tの舞台は、どこか賞を取るためにドラマをやっているところがあって、ドラマそのものの楽しさを忘れてしまっていたように思えた。そこで最後にドラマを楽しんで作りたいと思い、他大の人々と一緒にこのドラマに参加した。 ドラマが好きな連中が集まったから、とても活気ある舞台になった(なかには役者目指して劇団でがんばっている人もいる)。ただ、キャストは能力よりも、ドラマが好きな人を選んだため、個々のキャスト間の能力差が目立ってしまったところが惜しいところだ。 僕自身は、最初キャストとして応募して、オーディションに落ちて、スタッフとして参加したが、担当したライトがなかなかおもしろかった。舞台を照らすベースとなるような明かりから、夕日や、雷、ある場面のある役者だけ照らすような特殊な照明まであれこれ試行錯誤しながら作っていく。もちろん、経験者がいないとどうしようもないが、ライトを組み上げていく過程が先ほどのもの作りに通じていて、おもしろいものである。さらに、プロップよりもおもしろいのは、物理空間だけでなく、時間空間も作り上げるところである。つまり、ライトを変えて時間経過を表現したり、どういうタイミングで雷を落とすとか、もっと基本的なことなら、ライトの明るさを変えるつまみをどう動かすとか、そういったことを工夫することがおもしろいし、プロップと違って本番が本番だから(プロップは本番前に大事な仕事が終わってしまう)ドラマに参加しているという実感があった。 今、振り返って考えるのは、このドラマで、自分はライトのような、縁の下の力持ち的仕事をこなすのに向いていると確認したように思えることである。役者は、ライトを浴びて客の注目を浴びる華やかな存在である。誰もがあこがれる存在である。ただ、役者がこなせる人というのは、みんなの注目を浴びれば浴びるほど生き生きと自分を表現できるような人でないとつとまらない。私は、そんな人間でなく、スタッフのようなゴールに向けてこつこつとものを作り上げていく過程で能力が発揮できるタイプの人間である事がはっきりと自覚できた。 |
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"The Hollow" by Agatha Christie Director Kumi Reed 1994.3 烏山文化会館 |
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